わたしは川の流れる音がとても好きだ。音のみならず、川の流れが見えるのならずっと眺めていられると思う。鴨や白鳥が居れば尚よし、だけれど、贅沢は言うまい。
さて、時期は2026年1月下旬、暦の上では大寒。夫によると、最近は毎朝、十勝川の川辺の木々には樹氷がついているのだそうだ。そんな話を聞いていて思いついた。
『氷の流れる川が観たい!』
と、言うことで早速、車で3分、近くの十勝川へ行く。なんてことはない、いつもの散歩で見慣れている川。時刻は朝7時。放射冷却で最も大地が冷える時。川に近づくと、もうもうと湯気のように気嵐が立ち上り、太陽の光がその中を黄金色に照らしていた。
車で橋の上を通ると、川上から沢山の割れた薄い氷が流れてきているのが見えた。『これだ!!』車から飛び降り、橋の手すりにもたれかかり、遠くの方から順に流れてくる氷を目で追う。氷はゆったりスルスル〜〜〜〜とこちらへ向かって川の表面を遊泳してくる。途中、川の流れによってパリパリっと割れたりもしている。川下へ行くに従って、砕けてゆく仕組みらしい。
氷はどんどん流れてくるから、ずっと見ていられる。川辺には、樹氷がびっしりとついている。そしてよく見ると、たくさんの野生動物の足跡が、まるで刺繍のように、真っ白な大地に走っていた。しばらくそんな氷点下22度の世界を楽しんでいると、身体がキンキンに冷え、顎がガタガタ言い出したので、いそいそと車に戻る。そして次は川沿いの堤防を走る。
静かな静かな…
いつもの川、いつもの景色のはずが、今朝はまるで違っている。ダイヤモンドダストが朝日に照らされ、世界は一面、キラキラと輝いている。立ち上る気嵐が、視線を遮り、、、
と、一本の大きな樹に目が留まった。大きな鷲が静かにその木の枝にとまっていた。そして、その鷲の周囲には数羽のカラスも。その樹を目掛けて飛んでくるカラスもいる。よく観ると、どうも鷲のそばにつかず離れず、の距離を保ちつつ枝にとまっているように見える。まるで、この鷲のそばにいることを、カラスが選んでいるかのような距離感。「もしかして、お互いに近くにいることで暖をとっているのではないかな?」そんな気がした。「それとも、その木が特別に大きいから、鳥たちが好んでいるのかな」
その理由はよくわからない。けれど、このワンシーンはこの冬とっておきの物語となった。眩いダイヤモンドダストと共に、心の中で静かに白く光っている。そんな冬の十勝川の思い出。
きっと、鷲もカラスも寒かった。
You don’t have to make a good story.
Good stories are already lying around.
ーDavid Grailsー